田光のシデコブシ群落 国の天然記念物に指定


 の文化審議会から史跡名勝の天然記念物の新規指定で、昨年11月19日に「田光のシデコブシ及び湿地植物群落」が選ばれていましたが、3月2日正式に国の天然記念物として指定されました。  この群落は平成2年に、当時の名古屋女子大学の南川 幸(みゆき)教授(中菰野) らによって学術的な調査がなされ、平成7年に町天然記念物として指定され、その後平成8年には湿地性の生物も加えて県の天然記念物として指定されていました。

他に類を見ない大規模群落
 シデコブシは、東海地方特有のモクレン科の樹木です。毎年、3月下旬から4月上旬に、ピンク色の可憐な花をた<さんつけます。この田光のシデコブシ群落には、周辺も含めると700本以上のシデコブシが自生しており、日本でも有数の生育地となっています。この付近は、谷すじの緩やかな斜面から湧水がしみだし、その周辺にシデコブシをはじめ東海地方特有の植物であるシラタマホシクサやミカワバイケイソウが生育しており、これらの植物は東海丘陵要素植物とよばれています。また、本来寒い地方の植物であるイワシヨウブやミカヅキグサ、希少な植物であるカザグルマやサワシロギクも生育しています。この湿地植物群落は、豊富な湧水だけでなく、かつての水田耕作や薪刈りなどにより、人為的に作られた良好な光環境が作用して維持されてきたものです。このような、東海丘陵要素の植物群と湿地性の植物群落が良好な形で保存されているところは、他所では最近たいへん少なくなり、付近一帯は学術的に価値が高い地域であるということから、今回の指定となりました。

4月2日に行われた観察会
4月2日に行われた観察会

田光のシデコブシ及び湿地性植物群落

田光のシデコブシ及び湿地性植物群落
シデコブシのもつ意義

 シテコブシは、早春、新葉のでる前に枝先に白色または淡紅色の美しい花をつける日本固有の落葉灌木(時には喬木)で、別名ヒメコブシ・ヤマモクレンとも呼ばれています。分類学上は、モクレン科ハクモクレン亜属コブシ節に分類され、コブシに近縁な種です。コブシと比較すると花弁が多く、伏状性が強いこと、葉が小さく楕円形で分布域も異なる等大きな違いがあります。
 現在知られているシデコブシの自生地は、岐阜県中津川市が東北限で、土岐・多治見・渥美半島・知多半島・三河・東濃、そして北伊勢(四日市市・菰野町・大安町)のいわゆる東海地方の海抜100m〜400mの丘陵地帯だけに分布し、沖積平野や山地には知られていません。東海地域では、コブシが地史的変遷の大きな影響を受け、より湿地に適応し、花弁の八重化を伴って分化により生じた種と考えられています。コブシから分化の要因としては、日本列島の大きな気象の変化や陸地の変化とも結び付いており、第三紀鮮新世のころにできた東海湖の沿岸地帯と、シデコブシの自生地の状況がほぼ−致しています。また、この地方の鮮新世の植物化石群の中に、シデコブシの種子や葉などの化石が発見され、この時代にシデコブシが自生していたことを裏付けるものです。その後、第四紀に入り日本アルプスや鈴鹿山脈などの隆起と沈降してできた伊勢湾との間に、濃尾平野や伊勢平野などが形成され、その中の湿地を伴う丘陵地という環境の中に隔離され、その後分布を狭め現在に至ったと考えられています。この様にシデコブシは、東海地方にのみ特産する樹木で「生きている古代の植物」として、地史的な意義・価値を持つ貴重な植物です。

東海湖:現在では、はっきりとした湖を形成していたものではなく、湿地や沼地のような形状であったのではないかと考えられています。