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鎌ヶ岳

 

山の写真

 鎌ヶ岳は、鈴鹿山脈の中央部、御在所山の南にあって、標高は1161m。 その名の由来は山容が鎌の刃のように鋭いところから、また、冠が岳、鳥帽子が岳とも呼ばれていました。
  地質は全山花崗(こう)岩で成り立ち、風化浸食が進み、殊に南斜面は切り立った険しい崖となっていて、頂上近くでは急な斜面を鎖をつかみ、よじ登らなければなりません。頂上は、狭いが眺望は雄大で、眼下に伊勢平野が広がり、四日市の工場群から遠く知多、渥美半島まで望むことができます。
  山頂直下の東側には、県の天然記念物指定の「鎌ヶ岳ブナ原始林」があります。このブナ林は、太平洋側の代表的な林ですが、まっすぐに抜き出た巨木の根元には、日本海側の多雪地植物のヒメモチ、ハイイヌガヤなども見られ、寒暖両地帯の植物が仲良く住み分けている珍しい植物相を見せています。そして春から初夏にかけて、ブナ林の林床にニホンシャクナゲの古木が薄紅色の花を咲かせます。その上部のブナの原始林が芽吹くころは、新芽が銀白色に輝いて、神々しいほどの景観を見せてくれます。
  早春、雪解けが始まるころには、ニホンカモシカが尾根伝いにやってきて、緑の濃いアオキの葉を探し求めて、岩の上に立つ姿が見られます。そして猪の一家はイブキササの茂みを寝床にして、暖かくなるとウリンコを引き連れて明るい岨(そわ)道(険しい道)を歩きます。 山では植物も、動物も生息場所を住み分けて、自然の掟を守り平穏に生きています。
  鎌ヶ岳の山頂には水沢の人たちが、石の祠(ほこら)、堅固な玉垣をめぐらし、 石鳥居まで建て伊勢の神を祭っていましたが、昭和28年の台風により南側の急斜面が大崩壊を起こして、 祠も鳥居も深い谷へ崩れ落ち、その代わりの祠だけが大岩のかげに祭られています。
  この鎌ヶ岳への登山道は、鈴鹿スカイラインの武平トンネルの上から南へ、 尾根づたいに進むのが最も安全なコースです。 頂上から尾根伝いに水沢峠へは、一部の登山家はさておき一般のハイカーは危険です。 なお、雲母(きらら)林道を経て、雲母峰の頂上から尾根伝いに鎌ヶ岳へ向かうのは平坦でおおむね安全ですが、 途中水沢寄りに急な崖があるので、足下の用心が必要です。 この登山道の両側にアブラチャンの群生が続き、黄色の可愛い花芽をつけてその香りが尾根に漂います。 また、ここの馬酔木(あしび)の林床は、風が美しく掃き清めて、落葉一つない、さながら日本庭園の趣です。
 鎌ヶ岳は鈴鹿連峰きっての秀峰ということで、山登りが大好きだった菰野藩の第十代藩主雄興(かつおき)は、 春秋に鎌ヶ岳に登り「冠嶽記」という美しい紀行文を残しています。 また、昭和の俳人山口誓子は鎌ヶ岳を仰ぎ見て
 
   雪嶺の大三角を鎌と呼ぶ  誓子

   という秀句を詠んでいます。

(作成協力 佐々木一氏)



稲森谷から見た朝もやの中の鎌ヶ岳
稲森谷から見た朝もやの中の鎌ヶ岳
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