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ふるさとの山 9

猫山

 

山の写真


 猫(ねこ)山は千草の山、菰野富士の北側から朝明渓谷までに連なる村里に近い山のことです。名の起こりは、猫が背を丸くして、頭を低くして座っている姿にそっくりですので、誰いうとなく、千草では「猫」の愛称で呼ばれてきました。
 大字千草の山地の小字図には「猫正」と記されていて、「正(まさ)しく猫」の姿に似ていますので、昔の人も「ねこ」と呼んだのだと思われます。猫の背中の一番高いところが標高620メートルのピークで、俗に「猪の踊り場」といい、見晴らしのよい頂上です。猫の首のあたりが標高464メートルの低いところです。そして、猫の頭は笠を伏せた様な、笠岳と呼ぶ標高541メートルの、頂きが丸く優しい姿で猫の頭に当たります。
 昔から猫は、ネズミを捕らえてくれるので身近に飼われ、家族同様に可愛がられていたものでした。
 なお、全国には北は山形から、南は鹿児島まで、猫山、猫岳と「ねこ」の名のつく山が16もあります。いずれも標高は低く、頂上が猫の背中と頭に見える村里に近い山が多いようです。
 この猫山の頂上部、猪の踊り場から西に直線でおよそ320メートルの所に風越谷、井戸谷とよぶ断層帯が南北に通っています。ここは、西から東へと風の吹き抜けて通る狭い谷ですので風越しの名がついています。風越しの小峠の西側は井戸谷といい、ここは風化、浸食が進み岩石が井戸のようにくぼんでおり、自然の営みを観察できます。そのくぼみには猪の風呂といわれるヌタ場もあります。この谷を通る道が東海自然歩道で、昭和45年3月に三重県下で最初に指定、整備されました。

千草水力発電所
猫山の北のすそにある千草水力発電所
(普段は入れません)
 猫山の北端の裾(すそ)の朝明川一の瀬に、明治40年千草水力発電所が送電を開始し、当時の千種村では家庭に文明の灯が明るくともり驚いたものでした。
 そして猫山の正面の裾野は明治43年に名古屋の陸軍第三師団の演習場に指定され兵舎も建設されました。その上の「鷺(さぎ)の湯温泉」は復興されて、旅館が三館も出来、演習場にきて戦闘訓練を行う将兵の慰安の場ともなりました。その広大な演習場も、平和になった昭和三五年湯の山ゴルフ倶楽部(今の三重カンツリークラブ)になりました。
 なお、猫山の猫は南の菰野富士を眺めている姿ですが、この二つの山の間には鳥井戸川が流れて、その上流に国見岳がそびえています。その直下標高800メートルの高地に、昔は比叡山延暦寺直系の冠峰山三嶽寺がありました。この寺は北伊勢の天台宗の寺院を傘下に置き、修行の僧兵もいて勢力がありましたが、信長の伊勢進攻の軍勢に焼討ちされて滅亡しました。この寺の盛んなころは菰野富士の北側が表参道で、いまもその参道の要所に道案内の石地蔵が残っています。
 近年発見された西菰野の正眼寺の薬師三尊像は、平安仏の立派な仏像ですが、このお寺は三嶽寺の末寺であり、そのことからも本寺の勢いをうかがい知ることができます。
地図 猫山
猫の頭にあたる笠岳の右手には御在所山が見えています。