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町長雑感

地域における文芸活動

−「村より古き六地蔵」−

「盂蘭盆や 村より古き 六地蔵」 本年の敬老訪問で赴いたお宅の床の間に一幅の軸が掛かっており、控えめな朱色が浮き立つ無駄のない描写に見入ってしまいました。その軸には「盂蘭盆(うらぼん)や 村より古き 六地蔵」という句が記されており、描かれた日本画との相乗効果により、時間的奥行きを強く感じました。浅学菲才な私のような者にこのような強い印象を残す作品ですので、恥を忍んで作者をお尋ねしたところ、そのお宅の親戚にあたり、菰野町の俳人である藤井鬼白(きはく)の手によるものでした。ちなみに、鬼白の日記である『続随意軒日誌』や『藤井鬼白自選句集』によると、この句が作られたのは昭和16年で、第2〜3次近衛文麿の時期であり、時代背景も加味するとこの句はさらに味わい深いものとなります。

 閑話休題。

 鬼白は、本名を藤井喜市といい、明治38年から昭和5年の15年間、現在の朝上小学校の校長を務めた教育者であり、現在も朝上小学校南に石像が設置されているほどの人物です。当時、小島、田光、田口などで和歌や俳句などの会が活発に活動しており、学校運営のみならず、地域におけるそれらの文芸活動にも熱心に取り組み、現代でいう公民館活動に積極的に関わりました。また、特に俳句については、桑名の天春静堂(あまがすせいどう)と親交があり、静堂の俳誌である「かいつむり」の編集にも関与していました。

 ここ数年は毎年7月に開催され、本年で第19回目を迎えた菰野町俳句大会は、平成9年に開催された天春静堂翁顕彰俳句大会に起源を持ち、鬼白に関して触れるならば、平成11年の第3回から天春静堂翁・藤井鬼白翁顕彰俳句大会(両翁は同格扱い)となり、両翁の顕彰を兼ねて行われています。10回の開催を節目として、第11回からは菰野町俳句大会となり、冠からは両翁の号はなくなりましたが、この大会の意義が、その意義を失うことなく、後世に引き継がれることを期待しています。現在に至る菰野町の俳句の歴史を作った先人のご努力に敬意と感謝を申し上げます。


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