第310回

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  田口新田の元服式   文 郷土史家 佐々木 一
区役員立会いの中で行われた
元服の儀式

区役員立会いの中で行われた元服の儀式
 毎年、年の初めに行われる成人式は、昭和二十三年に国が制定し た祝日ですが、わが町の田口新田区では昔の成人式である「元服式 」が、区の伝統行事として連綿と継続されて来ました。
 今年、平成十六年一月十二日午後一時から、田口新田区の鎮守、 神明社の拝殿で、この地区で生まれ育ち十五歳になった
 柚木元宏 鈴木貴大
 鈴木貴博 鈴木健司 
 柚木亜希子 土本道華さんら男子四人、女子二人の六人が、目出 度く十五歳を迎えたことを地区挙げてお祝いしょうと、田口新田区 長の木下勝巳氏をはじめ区の役員も参列して儀式が開始されました。
 祭主の増田秀樹宮司が、神前に今日の元服者六人の名前を読み上 げて奉告、形通り厳粛に行われました。きちんと正座して背筋を伸 ばし、大きくなった姿に感動した木下区長は、「よくこんなに背丈 も伸びて立派な若者になってくれました。両親をはじめお家の皆さ んのよろこびは当然のこと、この区においても年寄りが多く案じて いましたが、今日の若い皆さんの元気あふれる姿を見て、うれしい ことと安心しました。これからまだ勉強と体を鍛えてもらうこと、 どうぞ頑張ってください」と心からよろこびの祝辞を贈りました。
 元服とは、男の子が十五歳になると前髪を剃り、月代を置き名前 も改め、成人になったことを示し祝うことで、武士の家では服装を 改め、頭に冠を置いた元服式を行いました。
 江戸時代の菰野あたりでは、村毎に「宮守」という年齢集団が組 織されていて、男の子はこの宮守の仲間に加入するのが「元服式」 でありました。十五歳になった正月十五日、宮守連中の初寄合の席 に父親に付添われて出て、連中の居並ぶ前で、まず父親が「私の伜 太郎が本年十五歳になりました。今日から宮守連の仲間に入れて頂 きたく、お願いにあがりました」と口上を述べて、親子共に深々と お辞儀をすると、上に座る若者頭から「よかろう」の言葉があって 盃を受け、加入が許されました。宮守は、村の氏神の祭事に奉仕す るのと、村に火事、洪水などの非常の場合は、鐘とほら貝を合図に 急ぎ出動して村を守りました。
 この元服式の日から一人前の男に見られ、父親に代わって道普請 、川普請に出役することが出来ました。
 一方女の子の場合は、十四、五歳ごろになって初経を見ると、身 近な伯母が赤飯をつくり、おこしを縫い、こっそりと祝ってくれま した。それからは「娘組」に入り娘宿でお針や行儀作法を習いました。
 この様に古くからあった「宮守」「娘組」などの年齢集団は、明 治期に入ると「青年団」「処女会」の様な新しい団体に発展して、 次第に元服式もなくなり、忘れられてゆきました。
 この田口新田は、江戸初期に桑名藩の新田開発が進められた村で 、阿倉川、羽津、田口あたりから入植して原野を開墾し、畑、水田 に造成された土地で、米作りをするためにいくつもの溜池を築き、 大変な苦労の結果、今日の立派な村に仕上げられました。そして村 人の心のより所として神明社を創建し、つぎは真願寺を開基してき ました。こうした新田開発村では、村づくりに若い人の力が必要、 その願いが元服式を絶やさず今日まで継続されて来たものでありま す。このお正月にはこんなうれしいことに合うことができました。