第422回
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  人生最期の儀礼
文 郷土史家 佐々木 一

 人は生まれ、そして死を迎えねばなりません。今では葬式を家ですることは少なくなりましたが、昔の葬式はもちろん家で行いました。村々によって多少の違いはありますが葬式の段取りについて書いてみます。

お墓での野辺送り
お墓での野辺送り

 まず一家の中に死人が出た場合は村の最小の自治組織の組頭が葬式組の組頭の所に届け出ます。葬式組とは、葬式には人手が多くいるために、葬式の際に互いに協力して葬式を執り行う組織のことで、平生の組よりも大きな単位でした。葬式組の組頭は喪主の親戚の主だった家を訪ね、火葬か土葬かどのような葬式の人員、規模にするのかなど長老の意見を聞き、会葬者の人員の数を推定し、葬儀にかかる奉仕の人の人数を当たります。

 そして、村の人に葬儀のあることを触れ、集落の長に火葬場の使用願いを出し、葬式の前日の夜伽(よとぎ)の開始時間や葬送の開始時間の設定をします。さらに火葬に必要な人を集めます。火葬には、たいてい隠亡(おんぼ)頭と隠亡衆四人が集められました。隠亡衆を集めるのと同時に、青松葉、松の丸太、薪、柴、藁(わら)、莚(むしろ)などの火葬用の燃料が準備されます。今と違って性能の良い炉などがない時代です。人の亡骸を火葬することは難しいことでした。尊いご遺体を焼き残しては大変です。隠亡衆は葬式組から選ばれましたが、隠亡頭は火葬の経験が豊富なものや普段から火を使う仕事についているものなどから選ばれました。火葬は大きな穴を掘った火葬場で行われ、太い松の丸太を並べ、その上に樫などの硬い木の薪、柴、藁などの順で組まれ、最後に莚がかけられました。これらの組み方も隠亡頭が火を長く燃やして、遺体をきっちりと火葬できるように指導しました。

 その他に野道具や非時方の準備をします。野道具では紙で作った竜の頭を模した、「竜の灯篭」と呼ぶものを四本準備します。また三昧(さんまい)へ通じる六道に道しるべとして立てるロウソクの灯篭を準備します。火葬や野道具の準備をして主に外まわりの仕事をする人たちを野方衆と呼びました。

 非時方は葬儀が終わるまでの食事を用意する係です。葬儀の間、葬儀を出した家では、火を使うことができないので、組内の家で非時所を決めて、昼の膳、夕の膳の準備をします。そのための準備として御飯釜、汁鍋、椀、本膳などを用意し、さらに伊勢膳というお盆にくるみを割った足を付けた簡易の膳を用意します。この伊勢膳では葬儀が終わる頃に村の子どもたちにおにぎりを載せて総振舞いしました。

 葬儀が滞りなく終わると「野方衆の骨折りで無事に浄穴の火が燠(おき)だけになり、亡人は成仏なされた」と喪主に報告があって、葬儀に参加の一同がお仏壇の前に並び、葬儀組頭が司会して正信偈(しょうしんげ)を読唱して、葬儀の無事終わったことを仏に報告、一日の組員の奉仕にご苦労の謝辞を述べて解散します。

お墓へ向う葬列
お墓へ向う葬列

 そして葬儀の翌日は隠亡頭が灰を掻き出し、その中から木と竹の箸でお骨を拾い、骨つぼに納め、葬家の家族も順々に拾い納めます。

 今でも大変な葬式ですが、その昔の葬式は村を挙げての行事でした。