BEYOND 300th 菰野ばんこ

300周年を迎えた萬古焼

祖生誕300周年を2018年に迎えた萬古焼。三重県北部を中心に地場産品として古くから生産され、菰野町もその生産地のひとつとして技術を受け継いでいます。萬古焼に携わる職人たちは、300年の歴史の中でそれぞれの窯元で創意工夫を行い、蓄積された技術を昇華させ、そして今日の萬古焼を焼き上げています。今月号の特集では、現代の萬古焼が形作られるまでの系譜と菰野の地で意欲的に作陶活動を行う7人の窯元たちの姿をお伝えします。

古萬古

  ▲古萬古
  色絵金彩山水文盃

古萬古

  ▲古萬古
   色絵山水文雪輪鉢

古萬古

  ▲古萬古
  青釉色絵山水文獅子鈕銚子

古萬古

  ▲古萬古  
  色絵金彩山水文盃

古萬古

     ▲古萬古
     色絵龍文花生

古萬古

  ▲有節萬古
  色絵菊牡丹文福面形皿

古萬古

  ▲有節萬古
  青釉丸文猪口

古萬古

  ▲菰山焼
  菰野焼菓子鉢

古萬古

  ▲有節萬古
  青釉三人形蓋置

古萬古

   ▲有節萬古
   色絵雨龍桃文盃洗

陶祖 沼波弄山の功績

古焼は、江戸時代中期に桑名で陶器専属の問屋を営んでいた沼波弄山(ぬなみろうざん)が朝日町小向に窯を開いたことが始まりといわれています。弄山の作品には沼波家の屋号である萬古屋の「萬古」あるいは「萬古不易」の印を押したことから萬古焼と呼ばれるようになりました。
 弄山が作る焼き物は好評を博し、後に将軍家からの注文も受けるほど評価が高いものでした。1751年には江戸の向島小梅の地にも窯を設け、江戸でも萬古焼は評判を得ました。しかし、1777年に弄山が亡くなると、萬古焼は徐々に衰退の一途をたどるようになりました。現在では、この時代の作品を弄山以降に再興された萬古焼に対して「古萬古」と呼んでいます。

受け継がれる
300年の技術と伝統
そして現代の萬古焼へ
古萬古

▲有節萬古
 色絵四季花文平向付

有節萬古から四日市萬古へ

波弄山の死後、桑名の古物商、森 有節(ゆうせつ)と弟の千秋(せんしゅう)が萬古焼を再興するため、萬古発祥の地である朝日町小向で窯を開きました。有節は神社の大工仕事をこなすほど木工技術に長け器用で、弟の千秋も兄に劣らぬ才能の持ち主であったといわれています。2人はその才能を生かし、当初は沼波弄山の作風を再現したものを多く作陶していましたが、次第に時代を先取りするような独自の新技法をいくつも生み出し、人気を集めるようになりました。有節独自の技法とこれまでにない独創的な作品から、有節の作品は「有節萬古」と呼ばれるようになりました。
 有節萬古の人気に注目した四日市市末永村の山中忠左衛門(ちゅうざえもん)は困窮した人々に職を与えて救済しようと四日市の地場産業として窯業を興しました。これが「四日市萬古」の始まりです。四日市萬古は四日市市垂坂山の陶土を使い、木型、土型による成形の容易さから多く流通させることができ、四日市港が整備され交通網が発展すると、需要が増大して全国へ広がりました。また、海外向けの製品を製造し、販路を輸出へも広げていきました。こうして世の中に萬古焼が大きく知られることに繋がりました。

※掲載している「古萬古」「有節萬古」は全てパラミタミュージアム所蔵のものです。

菰山焼と菰野萬古の発展

日市、桑名などそれぞれの地で発展を遂げた萬古焼は菰野町へも波及しました。森 有節に陶法を学んだ菰野町の土井吉造(どいきちぞう)は菰野藩主から「菰山(こざん)」の銘を賜り、1852年から東菰野村で「菰山焼」と称される焼き物の作陶を始めました。菰山焼は茶器や花器などが多く、「菰山」の丸枠印が捺されています。吉造が1899年に亡くなると菰山焼は衰退し、遺されている菰山焼の作品は大変貴重なものとなっています。
 菰山焼の衰退以降、1945年頃から町内で製陶所が開窯され始めました。土地が平坦で広く、燃料となる薪が付近で豊富に得られ交通の便も優れていたことから竹成区を中心に製陶所ができはじめ、その後、永井区、下村区、川北区、宿野区などで萬古焼の生産が行われました。1965年頃には町内に10箇所以上の製陶所が存在し、四日市市の萬古工場群にも匹敵する規模となっていました。

古萬古

▲菰山焼
徳利

窯元の個性光る菰野ばんこ

在、町内には萬古焼の窯元として7つの製陶所があり、萬古焼の新たな価値の創出や技術の伝承に向けて取り組んでいます。特に近年では菰野町の萬古焼をブランドとして確立するため「萬古」をあえて平仮名で記して「菰野ばんこ」と称して売り出しています。
 「菰野ばんこ」の7つの窯元ではそれぞれの特徴を生かした作陶活動を行っています。生産する製品もこれまでの萬古焼にないデザイン性に富む器、萬古焼の耐熱性を生かして直火やIH調理機に対応した鍋や皿、お米をよりおいしく炊きあげられるように考案されたご飯鍋など、これまでにないものが数多く生み出されています。それらの製品は従来の萬古焼の特性を持ちつつも形や色などで真新しさを感じられるもので、市場ではその真新しさが付加価値となりより一層、注目されてきています。使用する人の生活を意識して、ニーズに細かく対応してきた菰野の窯元たちの柔軟な発想と独自のアイデア、そして経験で培われた確かな技術が萬古焼を新たな形へと昇華させています。

藍窯 陶工房 三鈴陶器
泰成窯 松尾製陶所 クラフト石川 山口陶器

7人の窯元が作り上げる

野ばんこを生産する7人の窯元は「菰野ばんこ会」を結成し、菰野ばんこの普及を図っています。その活動のひとつとして菰野ばんこ焼「窯出市」があります。窯出市は、2019年で14回目の開催を迎え、7つの窯元が1年間の集大成として作品を持ち寄り、販売します。例年、県外からの来場者も多く、目当ての窯元の作品を購入しようと多くの方で賑わいます。
 今の日本のライフスタイルに合った萬古焼をどのように提案して生産するか。現在の萬古焼は、大衆向けの大量生産だけが求められるものではなくなってきています。そんな状況の中で7人の窯元は時には技術を教え合いながら新たな菰野ばんこのかたちを生み出し続けています。菰野町の歴史ある地場産品として300年の伝統を絶やさないよう窯のように熱い思いで今日も菰野ばんこを作り続けています。

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