50回目の炎の祭典

冠峰山三嶽寺と僧兵たち

の山温泉にある冠峰山三嶽寺は、天台宗をおこした僧、最澄(伝教大師)が全国に開いた山岳宗教の拠点のひとつです。武家政治の時代には当時の政権の横暴に対し、天台宗の僧たちも武装して三嶽寺を守り、約760年もの間、守り続けました。特に永禄11年(1568)から始まった織田信長の伊勢侵攻に対して、天台宗の僧兵約300人が戦ったといわれています。しかし、北勢地方の天台系に属する寺院はこのとき、ことごとく焼き滅ぼされ、三嶽寺も兵火に焼き討ちされ滅亡しました。現在の冠峰山三嶽寺は、その後、再興されたものです。
 僧兵まつりは、勇敢に戦ったかつての僧兵たちの姿を明治の初め頃から祭りとして再現したもので、温泉を発見した浄薫和尚の供養とともに毎年、盛大に開催されています。
①子どもたちに餅を振る舞う僧兵もちつき山車②御在所ロープウエイ会場に集った大勢の僧兵たち③昭和40年代、祭りの最終日に行われていた火炎みこし

1⃣子どもたちに餅を振る舞う僧兵もちつき山車
2⃣御在所ロープウエイ会場に集った大勢の僧兵たち
3⃣昭和40年代、祭りの最終日に行われていた火炎みこし


人の声
人の声

僧兵まつりのこれまで

在では、秋を迎える上で菰野町には欠かせない祭りとなっている僧兵まつり。その前身は湯の山温泉の湯元祭りでした。各旅館、御在所ロープウエイなどの関係者は湯元祭りに湯の山温泉街全体をにぎわせるため祭りの目玉が必要と考え、実行委員会を組織し、焼き討ちされた三嶽寺と僧兵たちの姿をもとにして「火」をテーマにした「僧兵まつり」を企画しました。僧兵まつり開始当初は現在のような火炎みこしはなく、わらを燃やすなどして兵火を表現していましたが、その数年後、木製の樽に松明を取り付けた火炎みこしを祭りの中核に据えるようになりました。
 毎年10月8日から3日間、僧兵まつりが開催されていた昭和年代には湯の山区の子どもや旅館で働く芸者だけで担ぐ子どもみこしや芸妓みこし、それぞれの旅館前で僧兵たちがつきたての餅を振る舞う僧兵もちつき山車なども行われていました。そして近年では、10月の第一週の週末に1日間で開催されるようになり、祭り一番の見どころである重さ約600kg、100本ほどの松明が燃える勇壮な火炎みこしの姿は変わっていません。炎を扱い、危険が伴う祭りではありますが、これまで一度も大きな事故はなく、毎年催行されています。

50回目の炎が灯るとき

い秋風が吹く天候となった10月6日の祭り当日。強い風は夜になっても静まることはなく、三嶽寺に灯された炎は大きく揺らいでいました。午後7時、衣装をまとった僧兵たちが集うと、50回目の炎を一目見ようと集まった100人以上の見学者、カメラマン、報道関係者とともに祭りの熱は徐々に高まっていきました。三嶽寺住職の祈念がはじまり、僧兵一人ひとりに冠峰山三嶽寺の本尊、不動明王の力が込められると、その熱量はさらに増し、松明に炎を灯しはじめると、熱量は最高潮に達します。「ソイヤ」という僧兵たちの勢いある掛け声のもと、大きく燃える火炎みこしが持ち上がると周囲からは歓声が沸き、目的地である御在所ロープウエイ会場に向けてゆっくりと動き出しました。
50回目の炎
①僧兵たちが迫力ある音色を響かせる僧兵太鼓②最後の力を振り絞り上り坂に臨む僧兵たち③フィナーレで盛大に打ち上げられた花火

1⃣僧兵たちが迫力ある音色を響かせる僧兵太鼓
2⃣最後の力を振り絞り上り坂に臨む僧兵たち
3⃣フィナーレで盛大に打ち上げられた花火


人の声
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燃え盛る火炎みこしの姿

き出した火炎みこしは旧三重交通バス停前までのしばらくの区間、下り坂を進みます。時折、火炎みこしの炎を抑えるために水を浴びせながら、曲がり角や傾斜の強い坂に注意をして着実に進んでいきます。旧三重交通バス停前まで辿り着くと、御在所ロープウエイ会場までは急な上り坂が続きます。ここからが僧兵たちの正念場です。上り坂に差し掛かると僧兵たちはこれまで以上に額に汗を流し、苦悶の表情を浮かべながら上っていきます。時には火炎みこしの重量に耐えきれず、進行方向から逸れそうになることもありますが一歩一歩上っていきます。
 ようやく御在所ロープウエイ会場までたどり着くと大勢の見学者たちが、間近で感じる火炎みこしの熱さと迫力に驚きながらも盛大な拍手で迎え、火炎みこしはその拍手に応えるかのように会場を一周します。火勢はピークに達し、燃え盛る炎は太陽のように明るく会場を照らします。見学者の出迎えに応えると火炎みこしは役目を終え、熱さと重さから解放された瞬間、僧兵たちは清々しい表情を浮かべていました。火炎みこしの到着を祝うかのように花火が打ち上げられ、50回目の炎の祭典が今年も無事に終わりました。
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