みんなの生活線 Life Line

皆さんの生活に欠かせないライフラインはガスや電気、水道だけではありません。
きっと、なくては困るもの―――公共交通。
生活のための線をつなぐ。
菰野町の公共交通の現在をお伝えします。

It would be very inconvenient for our daily life,
if there are no public transportation systems.

誰もが利用できる公共交通

西方向に13キロメートル、南北方向に10キロメートルのほぼ四角い形をしている菰野町。面積は約107平方キロメートルで、三重県内29市町の中では20番目の広さです。近隣自治体と比べて、広大な面積ではありませんが、町内の移動、さらには町外への移動には乗り物が欠かせません。
 皆さんは町内を移動するとき、または隣接する四日市市などへ出かけるときは、どうやって移動していますか? 徒歩、自転車、自家用車などさまざまな移動手段が考えられると思いますが、「目的地まで徒歩で行くことができない」、「自家用車がない」といった悩みをもった方々も町内には多くいます。特に町南部に駅や役場本庁、菰野厚生病院、商業施設などが集中していることから、町北部から町南部へ高齢者や学生の皆さんが移動する際に利用できる交通手段の拡充が課題となっている面もあります。
 そのため、現在、町で進めているのが、町内公共交通の充実です。鉄道、バス、タクシーといった公共交通機関を連携させ、互いに乗り継ぎしやすくすることで移動に不自由さを感じている住民の皆さんを助け、誰もが容易に目的地にたどり着くことができるようダイヤや運行路線を見直しています。また、MaaSシステムと呼ばれるインターネット上で公共交通機関の経路検索や利用予約ができるサービスの整備も進めています。
 「今は、車があるから大丈夫」、町内ではそのように思われる方も多いでしょうが、将来は運転免許証を返納するなど、自家用車で自由に移動できない日が来るかもしれません。そのとき、皆さんの生活にとって公共交通は非常に重要で欠かせないものになるはずです。生活になければ困るもの。ガスや電気、水道と同じくらい生活に不可欠なライフラインのひとつ―――それが公共交通であると言っても過言ではありません。

「今は車があるから大丈夫」

そんな安心はいつまでも続かないかもしれません。

みんなの生活線 Life Line

湯の山線の誕生からこれまで

治42年12月、菰野の実業家であった伊藤新十郎らが四日市軌道㈱として菰野~四日市間の鉄道の営業を出願しました。これが湯ノ山線の始まりです。明治44年8月、機関車が四日市港で陸揚げされ、牛車に積まれ、菰野へゆっくり1日かけて運搬され、当時の役場(現、菰野地区コミュニティセンター)付近で組み立てられました。線路などの敷設資材も同様に運ばれ、湯ノ山~菰野間から工事が開始されました。期間としては1年ほどで完成し、はじめに湯ノ山~川島村間で営業を開始しました。
 その後、運営事業者の変更や駅の廃止、台風による線路埋没被害などはありましたが、営業開始当初の路線を残し、現在は近鉄湯の山線として運行されています。

各地で存続と廃線の狭間

用者が低迷する路線では、廃線という選択が最後に待っています。そのような苦渋の決断に至る事業者が全国的に増加傾向にあります。以前は地元が反対する場合、路線を廃止できませんでしたが、平成11年に鉄道事業法が改正されたことで、事業者が届け出をすれば廃線できるようになり、人口減少により利用者が減少するなど経営が苦しくなった路線は事業者の意向で廃止できるようになりました。そのため、鉄道の路線バスへの移行などが全国各地で相次いでいます。
 現在、近鉄湯の山線は利用者数は減少傾向にあるものの、廃線の予定はなく、
通勤や通学の要として運行されています。この当たり前のように続けられている
路線の運行が、実は貴重なことだと実感できる良い機会かもしれません。

電車に乗ることの新たな価値

口減少社会の現在の日本では、都市部等の一部の地域を除いて、日常的な通学や通勤の利用者減少は避けられません。そのため、鉄道による移動の魅力を再発見し、どのように利用者の確保に努めるかが鉄道各社の命題となっています。平成30年から町と近畿日本鉄道㈱が協力して実施している足湯を設置した観光列車「つどい」もその一環で、これまでは移動手段にすぎなかった鉄道に、足湯に浸かりながら車窓の風景を楽しむことができるという付加価値を設定することで、電車に乗ること自体を観光にしてもらうよう企画を行い、観光客を中心とした利用者の増加を図っています。

コミュニティバスを増便

線バスやタクシーに関しても、路線の廃止や交通事業者の事業規模縮小が相次ぎ、地域の移動手段がなくなってしまう事例が全国各地で発生しており、菰野町においても路線バスは三重交通バス2路線のみに減少し、4者が競合していたタクシー事業者も尾高タクシーのみとなりました。このような状況の中、町では、平成11年から運行していた福祉バスを平成17年から三重交通㈱と連携して「菰野町コミュニティバス」として本格運行しています。地域の移動手段を守り、多くの方に利用していただくために、令和2年10月からコミュニティバスを1台更新し、主に朝晩の通勤や通学でご利用いただけるようダイヤを改正します。

のりあいタクシーが町内全域に

クシーは、目的地まで自由に行ける利点がある一方で、運賃の点で気軽に利用できるものではありません。

 そのため、町では、㈲尾高と連携し、平成30年から「のりあいタクシー」の運用を開始しています。利用には予約が必要で乗降場所も限定されますが、バスの少ない時間帯や最寄りのバス停がない方に主に利用いただいています。のりあいタクシーも令和2年10月から竹永、千種地区を中心に乗降場所を74か所増やし、町内全域で利用できるようになります。

公共交通という選択肢をこれから先に残す

最適な交通手段を選定する

共交通機関には、いろいろな種類があります。それぞれの役割を明確にし、適した公共交通を運行させ、組み合わせることが重要です。例えば、大量輸送に向いている公共交通は電車、バス。一方で、行きたいところに行くことができる交通手段はタクシーが思い浮かぶでしょう。公共性の観点から言えば、たくさんの人を乗せることができる交通機関の方が公共性が高く、運賃も安くすることができますが、一方でたくさんの人が一度に乗れるように運行時間や経路を逐一見直して、その時々にあった運行を目指していかなければなりません。ただし、電車やバスも誰も乗っていなければ、空気を運んでいるだけでお金がかかり、二酸化炭素の排出量も多く、環境にもやさしくありません。そのために、人がたくさん行くようなところはバスや電車で、他はタクシーで、といったように最適な交通手段を選択する必要があります。
 加えて、菰野町にはバスとタクシーの中間を埋める存在に「のりあいタクシー」があります。のりあいタクシーは電車の駅やバスの停留所に比べて遥かに多くの場所で乗り降りすることができます。今回、町内中部エリアにも拡大したことで、住民の皆さんのお近くにも必ずと言っていいほど、乗降場所が設置されていると思います。路線を細かく設定できない鉄道やバスよりも細かくネットワークを組み立てることができ、タクシーよりもずっと安く利用することができます。こののりあいタクシーも公共交通のひとつとして、新しい選択肢になります。

車を持たなくなる時代に

在は一人一台、車があるような時代ですが、通信技術の発展で車を持たなくなる時代、もしくは自動運転技術の躍進やカーシェアリングなどで使いたい時だけ車を使用する時代がいずれやってきます。そんな時代に、どこかにおでかけしたいとなった場合の選択肢のひとつとして公共交通を残しておく必要があります。そして、公共交通の選択肢は多い方が利用者にとって、使いやすくなります。今は公共交通を利用することが少なくとも、年を重ねた自分たちや、さらにはその次の世代の人たちがこの地で過ごしていくことを考え、公共交通を残すことが、現在の我々の責務であるようにも感じています。

MaaSでさらに使いやすく

択できる公共交通がある場合、スマートフォンなどを使って複数の公共交通機関の経路や乗車時刻が一目でわかるようになっていれば、使いやすい。そのための技術が菰野町で令和元年度から整備を進めているMaaSシステムです。AIによる経路検索から予約、利用料金の決済までできるようになれば格段に公共交通が利用しやすくなるでしょう。異例に近いことですが、菰野町は令和元年度に引き続き、令和2年度も国土交通省のMaaS推進・支援事業に採択されました。これは自治体主導で推進する昨年度の取り組みが評価された結果でもあり、今後、菰野町の実績が先進事例になっていくかもしれません。

令和2年度第2回菰野町地域公共交通会議の様子
▲令和2年度第2回菰野町地域公共交通会議の様子

有意義な場と時間にするため

共交通機関のほとんどは、車内に冷暖房を完備しています。加えて駅や車内にWi‐Fiによる通信環境や電源が整備され、駅や主要バス停に椅子と机があれば、ビジネスマンや学生がパソコン作業や勉強などを行うことができます。移動時間や待ち時間も無駄ではなくなります。こういった過ごし方は、自ら車を運転していては決してできません。人が集い、まとまって移動するからこそできる公共交通の利点のひとつです。菰野町では、利用しながら快適に過ごせる環境整備も含め、これからも選択していただける公共交通を目指して、力を入れていくと思います。住民の皆さんも公共交通機関で移動するという選択肢があることを頭の片隅に置いておいてください。そして、使えるなと思えるタイミングがあれば、使ってみてください。そこで「意外に使えるな」という新たな発見があるかもしれません。

町コミュニティバスの車内にWi-Fiを整備
▲10月から町コミュニティバスの車内にWi-Fiを整備し、より快適に移動できるようになります。

安全安心な公共交通を維持

型コロナウイルス感染症の影響で、町内公共交通機関の利用者は減少しています。令和2年5、6月の利用者が例年の2割程度となった公共交通機関もあり、運営面で苦しい状況を強いられています。
 このような状況を受け、菰野町地域公共交通会議は、町内小中高校生の通学や高齢者等の通院などのために地域の移動手段となり、公共交通を支える交通事業者の事業継続を図ることを目的として、令和2年8月、「菰野町の地域公共交通崩壊を食い止めるための緊急アピール」を発表しました。
 交通事業者においても、三密を防ぐための対応や運行後の車内消毒作業など感染症対策を徹底しており、安全安心な地域の移動手段として変わらない運行を行っています。住民の皆さんも公共交通の大切さをご理解いただき、感染防止に留意した上で、できる限り積極的な鉄道、バス、タクシーの利用をお願いします。

バス車内を消毒する三重交通㈱の従業員
▲バス車内を消毒する三重交通㈱の従業員

これからも私たちを支える生活線(ライフライン)

もしも公共交通がなかったら

分たちが暮らす地域から、もしも公共交通がなくなってしまったら、普段の生活はどのようになるでしょうか。学校にも行けない。買い物にも行けない。病院にも行けない。現在過ごしている生活が大きく変わってしまう方がたくさんいると思います。
 公共交通が一日にして突如なくなってしまう事例が実際にありました。それは、災害が起きた時。今年、九州地方で起こった豪雨災害では、線路や道路が氾濫した河川によって流され、鉄道やバスといった公共交通機関が使えなくなりました。過去の災害では、通勤や通学のために公共交通機関で通っていた方々が自家用車で移動したことにより、大規模な渋滞が起こり、大きな問題となりました。菰野町や近隣自治体でも、このように公共交通機関がなくなってしまったら同じような問題が発生することが予想されます。
 このようにならないためにもガス、電気、水道と同様に生活に必要不可欠な公共交通。ライフラインのひとつとして利用実態や利用者数などを勘案しながら、維持していく必要があります。これからも、菰野町では、地域の移動手段を守るため、交通事業者や地域の皆さんと一丸となって、さらに使いやすく、さらに快適な移動が実現できるよう、公共交通の整備を進めていく予定です。

 公共交通―――。住民の皆さんの誰しもが利用する可能性があり、生活の中でなくてはならないもの。これからの皆さんの生活の中にも、公共交通の路線はきっとつながっているはずです。

 
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